日本酒の基礎知識とおいしい飲み方
レッスン内容

清酒の酒造工程と原料

(清酒)の醸造は、米・水・麹・酵母というシンプルな原料から、高度な発酵技術を大切にして作られます。ここでは、日本酒の酒造工程と原料について詳しく解説します。


1. 日本酒の原料

品質の品質を決める最も重要な要素は、以下の4つの日本酒原料です。

原料 特徴と役割
米(酒造好適米) 専用の酒米を使用。デンプンが多く、日本酒の雑味成分が少ない
仕込み水の質が酒の味を決める。軟水(伏見)と硬水(灘)で味が変わる
麹(こうじ) デンプンを糖化させる酵素を生成し、発酵を助ける
酵母 糖分をアルコールと炭酸ガスに変え、香りや味わいを決定

(1) 酒米(さかまい)

  • 食用米とは異なり、心白(しんぱく)という柔らかいデンプン質を多く含みます。
  • 精米に適し、麹菌が入りやすい構造。
  • 代表的な酒造好適米:
    • 山田錦(やまだにしき)(最高級の酒米)
    • 五百万石(ごひゃくまんごく)(スッキリ系の酒向き)
    • 雄町(おまち)(芳醇な味わい)

(2)仕込み水

  • 酒の約80%は水。硬水と軟水で味が変わる。
    • 硬水(ミネラル豊富) → 発酵が進みやすく、辛口の酒になります。(例:灘の宮水)
    • 軟水(ミネラル小さい) → ゆっくり発酵し、まろやかで甘口の酒になります。(例:伏見水)

(3) 麹菌

  • 日本酒には「黄麹(きこうじ)」を使用します。
  • 麹菌は米のデンプンを糖に変える役割を持つ。

(4) 酵母

  • 酵母は糖分をアルコールに変えると、日本酒の香りや味わいが決まります。
  • 代表的な酵母:
    • 協会7号(長野) → フルーティーで華やか
    • 協会9号(熊本) → 淡麗な味わい
    • 協会14号→ 高級吟醸向き

2. 日本酒の酒造工程

の醸造には、精米→蒸し→麹造り→酒母→仕込み→発酵→上槽(しぼり)→貯蔵・熟成という複雑なプロセスが含まれます。

(1) 精米(せいまい)

  • 酒米の外側には雑味の元となるタンパク質や脂質が多く含まれるため、精米機で削減されます
  • 精米歩合(削減した割合)によって酒の種類が決まりました。
    • 大吟醸(精米歩合50%以下) → 華やかで繊細
    • 吟醸(精米歩合60%以下) → フルーティーでスッキリ
    • 純米酒(精米歩合70%以下) → 米の旨味が強い

(2) 洗い米・浸漬(せんまい・しんせき)

  • 精米後のお米を洗い、水に浸して適切な水分を吸収させます。
  • 浸漬時間が長すぎるとベタつき、短すぎると発酵に影響が出るため、秒単位で管理される。

(3)蒸し(むし)

  • 米を蒸して、麹菌や酵母が繁殖しやすい状態にする。
  • 硬すぎても柔らかすぎてもダメで、「外硬内軟(がいかないなん)」が理想です。

(4) 麹造り(こうじづくり)

  • 蒸気に麹菌を振りかけ、約48時間かけて繁殖させます
  • 種類:
    • 破精込み(はぜこみ)」がよく進むと糖化力が強く、良い酒になります。

(5) 酒母造り(しゅぼづくり)

  • 酒母(しゅぼ)は、酵母を大量に増殖させる工程。
  • 代表的な酒類
    • 生酛(きもと) → 自然の乳酸菌を利用(伝統的な手法)
    • 山廃(やまはい) → 生酛の手間を省略しつつコクを出す
    • 速醸(そくじょう) → 人工の乳酸を加えて速く造る

(6)仕込み(三段仕込み)

  • 酒母に麹・蒸米・水を3回に分けて投入し、大量のもろみを発酵させます。
  • 三段仕込みを行うことで、酵母の働きを安定させ、アルコール度数を上げる。

(7) 主発酵(しゅはっこう)

  • もろみの温度を10~15℃で約20~30日間かけて発酵させます。
  • 低温長期発酵により、香りの良い吟醸酒が生まれます。

(8) 上槽(じょうそう・しぼり)

  • 発酵が終わったもろみを絞り、酒と酒粕に選ぶ。
  • しぼり方の違い
    • 「袋吊り(ふくろづり)」 → 自然に滴る高級酒
    • 「槽搾り(ふなしぼり)」 → 伝統的な圧搾機を使用する
    • 「ヤブタ式」 → 現代の一般的な圧搾方法

(9) 火入れ(ひいれ)

  • 殺菌のため、日本酒を約60~65℃で加熱します。
  • 生酒はこの工程を省略し、フレッシュな風味を残します。

(10) 貯蔵・熟成

  • 約6ヶ月~1年以上保存して味を整えます。
  • 保存温度によって、新鮮な味(低温)または熟成した旨味(常温)に変わります。

(11) 瓶詰め

  • 出荷前にもう一度火入れを行い、瓶詰めして完了です。

3. まとめ

の酒造りは、緻密な管理と高度な発酵技術によって成り立っている日本酒。

  1. 原料は「米・水・麹・酵母」
  2. 「並行複発酵」により高アルコール度数(約15~16%)が可能
  3. 三段や仕込み低温発酵などの伝統技術
  4. 火入れや熟成で味のバリエーションを生み出す
  5. 酒造りは「精米→蒸し→麹→酒母→仕込み→発酵→絞り→熟成」の複雑な工程

この緻密な工程が、日本酒の深い味わいと香りを繰り返しているのです。

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